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【日本人だけど、韓国史専攻➁】

韓国留学

 こんにちは、そんあじです。今回は日本人で韓国史専攻は珍しい方かなと思うのでどんな授業を受けてどんなことを学んでいるのか公表できる範囲で書いていきます。

 なぜ韓国史専攻を選んだかなどは以前の記事を参照してください。

日本人だけど、韓国史専攻。①
 こんにちは、そんあじです。今回は、たった1人日本人として韓国の大学院(修士課程)で韓国史を専攻している私が、「家族からの反対は?」「韓国史専攻を選んだきっかけは?」など、需要は無さそうですが(笑)、皆さんが不思議に思っているであ...
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◎日本人たった1人で大注目の巻

 私の学校はもともと日本人が多くはありません。1年ごとに1人~3人日本人が入学するかしないかです。韓国に少し興味がある人なら聞いたことがあるだろう「ソウル大学」「延世大学」などのネームバリューのあるソウルの学校ではないです。さらに、私立の学校でないからか積極的に広報を行ってもいません。

 なので日本人に限らず、外国人でこの学校に入学してくる人のほとんどは、ネットで探して…など自分でこの学校を探し当ててきた人ではなく「教授の紹介」「知り合いがこの学校に通っている」という、ほとんどが紹介によりこの学校を知って入ってくる人たちです。

 かくいう私も、韓国人の教授が紹介してくださり初めてこのような学校があることを知りました。

・なぜその学校にしたの?

 大学院というのは大学と違って教授選びが大切だと思います。大学のように様々な授業を取って視野を広げることよりも、授業ももちろん取りますが教授のもとで特定の狭い分野の「研究」をすることが大学院の目的です。

 なので自分のやりたい研究に理解を示してくださり、相性が合うような教授を選ばないと後々大変なことになると思います。

 実際に、私の友達は教授と馬が合わず、論文を書かないといけないのに教授となかなか連絡さえ取れない、さらに提案した論文のテーマはことごとく却下され教授の好みばかりを押し付けてくる…という状況です。

 特に私は韓国史専攻を目指す時点で韓国人の教授からアドバイスをいただきました。

 その内容は、

「韓国ではいまだに、特に近代の歴史については凝り固まった歴史観をもっている教授が多いのも事実。なかには、日本人と研究することを快く思わないような方もいる。

 韓国の歴史観だけを植え付けてこようとする教授と、そこに集まるような学生に囲まれていると、のびのびと研究が出来ない可能性もある。なので歴史専攻の日本人の学生を快く受け入れてくれて、柔軟な考えの教授につく方が良い。」

というものでした。

 韓国に限らずですが、歴史分野は強烈な思想?が現れやすい分野だと思います。なので歴史を学びたい日本人として、他の専攻ではあまり心配しなくてもよい心配をしなくてはいけなかったです。


・学校の名前で選ぶよりも教授で選ぶ

 上記の理由で学校のネームバリューで選ぶよりも教授で行きたい学校を選ぶことが賢明だと判断しました。あと私は韓国で就職する気が無かったので。(もちろんその他の条件で学校を選んだ方を否定するものではありません。)

 教授の名前で検索すると、その教授が書かれた論文を読むことが出来ます。論文には教授の専門分野や興味分野はもちろん、考え方まで見えてきます。

 論文を読み、さらに韓国の教授にその方の来歴や雰囲気などを教えていただきこの方の元であればのびのびと勉強できると感じてその学校に出願することにしました。

 結果は大成功でした。教授も外国の院を出られて外国でお仕事をしていた方なので広い視野もあり、自分も留学生だった経験から、私たちの外国で暮らす苦労も理解してくださいます。


・やはり韓国史専攻の日本人は私だけ

 入学すると、やはり日本人の韓国史専攻は私だけでした。6年前かに日本人の先輩が1人いらっしゃったようですがそれ以降はおらず、久しぶりの日本人の入学です。

 韓国史専攻の先輩たちは歓迎してくださいました。韓国と日本の歴史は関連があることから授業の時に度々日本の話になるが、今まで日本人がおらず日本の立場や主張、日本ではどのように教わるかなどの実際のところが分からずじまいだったので私が来てこれから色々聞ける!と歓迎してくださいました。

 しかし他の学科の韓国人学生から見るとやはり私は異端なようです。入学して数日たったある日、構内を歩いていると「韓国史専攻に入った日本人?」と声を掛けられました。私はその方と面識がなかったので驚きました。

 入学してから在学生と交流するイベント等もまだ無かったので、どこからか「韓国史に日本人来たんだって」という噂が流れていたからでしょう。

 その後、その先輩が声を掛けてくることはなかったので「日本人と仲良くしたくて声かけた!」というよりは「ウッソ、まじで入学してたんだ」と確かめたくて声を掛けてきたのかなと思っています。

 そもそも学校に日本人が少なく、私の顔が明らかに日本人顔なのでもありますが、もし経済学部や翻訳学科であれば道端で急に「日本人でしょ?○○学部に入ったの?」と聞かれるでしょうか。


◎授業の内容

 今まで受けた専攻の授業の一部を紹介します。

・独立運動史

 その名の通り、植民地時代に行われた様々な独立運動に関係した色々を学びます。授業は教授の講義ではなく、毎週1名の学生が自分でテーマを決めてレポートを書き、それについて討論をする形式でした。

たとえば、「尹奉吉義挙についての日本と韓国の新聞報道」。これは私が書いたレポートのテーマの1つです。

 尹奉吉とは独立運動家です。中国の上海で行われた日本の天皇誕生日記念式典の際に爆弾を投げ込み、日本陸軍大将など殺害、負傷させました。この事件?義挙?テロ?に関する報道は想像する通り、日本での報道と韓国の報道では取り上げられ方も、内容も、注目するポイントも異なりました。どのように報道の差があったのかについて研究しました。なかなか面白い結果が出ました。

 その他先輩たちのレポートは「安重根と尹奉吉の義挙の違い」「独立運動で活躍した女性たち」「中国人は韓国の独立運動をどう見ていたか」、他には「臨時政府(3.1独立運動以降に独立運動をまとめる組織として作られた。韓国内に基盤を置いて活動するのは難しく、中国で活動した)」に関する研究などでした。


・北朝鮮史

 日本では聴くのが難しい韓国ならではの授業かな?と思って受講しました。

 北朝鮮というと日本は怖い!得体が知れない!というイメージがほとんどではないでしょうか。韓国から見る北朝鮮はまた違っています。

 ほんの数十年前まで韓国と北朝鮮は同じ国でした。そのため愛着、憎悪…など本当に様々な感情が入り混じっている、一言で表現するのが難しい感情をもっているように感じます。

 なんとゲストスピーカーとしていらっしゃった脱北者の方に直接お会いすることも出来ました。

 日本人だと自己紹介すると「北朝鮮にいた時、日本製の自転車にお世話になったよ、日本製の自転車はなかなか壊れなくてね」と日本の自転車の品質を感謝されるという謎の事態もありました。笑

 その方は興奮すると「동무(同務)」を連発しました。동무(同務)とは社会主義圏で思想を同じくする仲間という意味の言葉で、呼びかけに使われます。日本語だと「○○同志!」という感じでしょうか。

 落ち着いて話している時は恐らく使わないように気を付けていらっしゃるのですが、だんだん興奮すると「同務」を連発します。長年このように使ってきたんだなあ、というか、何年も使わなくなったのに体に染みついたその言葉と、その独特な言葉を聞いて、なんだか複雑な気持ちになったのを覚えています。

 その他にも日本から見ると北朝鮮の体制は「独裁!」と単純に見えてしまうかもしれませんが、勉強してみてそう単純なものではないと感じました。

 北朝鮮の独裁は相当綿密に計画を練って作り上げられた独裁であり、またそれを維持するために様々な面で相当に計算している事が分かります。

 北朝鮮の歴史教科書も見せてもらいました。数年前の教科書なのに紙質や印刷技術がかなり悪く、ぱっと見、博物館に並んでいる昭和の教科書のような感じでした。中身の文章もまあ言わずもがな…


 その教授は韓国人ですが北朝鮮研究のパイオニア的な存在なようです。なので北朝鮮に何度か訪問したことがあるのでその時の話もしてくださいます。

 ガイドしてくださる女性が毎回同じで顔見知りなようです。なのでその北朝鮮の女性ガイドさんに「そろそろ結婚はされないのですか?」と尋ねたそう。その答えは「私は結婚しません。心で金日成様と結ばれましたので。」と答えたそう。真意は分かりませんが、リップサービスとしてもそう答えなければならない状況がどのようなものなのか…想像に難くないです。


・韓国知性史研究

 知性史というざっくりしたテーマでしたので、テーマは思想に関わることならなんでもよく多岐にわたりました。

私は「儒学の受容の比較」を行いました。儒教は中国から渡ってきた思想ですが朝鮮では国の柱になるほど根深く受容されたのに比べ、日本には渡ってきたものの朝鮮ほどそこまで深く根付くことはありませんでした。それについて少し調べて発表しました。

 その他の先輩は「朝鮮での西洋医学の受容」「独立協会の思想」などなど。

他にも「朝鮮の鎖国政策が日本による植民地支配の原因になったのか」など一言で言い切るのが難しいようなテーマで話し合うこともありました。


◎留学生の強み

 韓国留学に限らず、どの国に行っても帰国子女など特別な状況でなければすべてをネイティブと同じようにこなすのは至難の業。言語の壁も、文化の壁も。

 それでも日本人として出来ることを探します。そうするとそれはネイティブ学生には出来なくて自分にだけ出来ること。

 たとえば私の場合は日本語の史料も使って研究するようにしています。日本の史料をネイティブに紹介できるのは私だけの長所です。

 あと、嫌でも「日本人」であることを意識させられる瞬間が必ずあります。その国の言葉の勉強もいいですが、自分の国を他の国の人に説明する機会が多いので自国の勉強もしていくといいです。

 私のように授業で日本人1人だけ…という場合は私が「日本代表」になってしまうのです。

 (中国人などは「中国はどう?」と聞かれると、人数が多く授業に常に何人かいるので、中国語で互いに多少相談してから答えていて少し羨ましい笑)


 以上そんあじでした。悲しい時もあるけれど、とても楽しいです。

↓お酒はもちろんですがゆず茶やホンチョのソーダ割りって美味しいんですよ



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